1)Koob, GF.:Front Psychiatry. 2013;4(72):1-18.1開発の経緯 ナルメフェンは1960年代に米国ロックフェラー大学で合成された選択的オピオイド受容体調節薬です。本剤はオピオイド受容体に選択的に結合し、μオピオイド受容体及びδオピオイド受容体に対してはアンタゴニスト活性を示し、κオピオイド受容体に対しては部分アゴニスト活性を有します。 アルコール依存症は飲酒により得られる快の情動を求めて飲酒をする“正の強化”と、アルコールを繰り返し摂取することで次第に快が減少し代償的に不快が強くなり不快を避けるために飲酒をする“負の強化”の2つによりアルコールへの渇望を生じ、飲酒行動をコントロールする能力が障害されることにより進展すると考えられています1)。アルコールによる“強化作用”には内因性オピオイドの関与が知られており、本剤はオピオイド受容体に作用し、内因性オピオイドにより引き起こされる快・不快の情動を調節することにより飲酒量低減効果を発現すると考えられています。 アルコール依存症の治療は断酒の達成とその継続が原則ですが、アルコール依存症の患者によっては達成困難と感じて断酒を受け入れずに依存症の治療そのものを拒否してしまうこと、また、断酒に至る前に治療を放棄してしまうことが臨床的に問題となっています。このため、断酒が困難な患者に対しては、飲酒量の低減を目標とした治療が世界的に広まっています。本剤は、繰り返し飲酒したい欲求を抑制することで飲酒量の低減効果が期待できることから、Lundbeck A/S社において飲酒量低減を目的として開発が進められ、2013年に欧州にて世界で初めて承認されました。 日本においても、国内臨床試験で有用性が確認されたことから、「アルコール依存症患者における飲酒量の低減」の効能又は効果にて製造販売承認を取得しました。本剤は、アルコール依存症の治療への新たな選択肢の一つとして期待されます。 海外では、欧州を含め30ヵ国以上で承認されています(2021年9月現在)。開発の経緯
元のページ ../index.html#3