V2-受容体拮抗薬(フィズリン)が投与されますが、効能又は効果は異所性抗利尿ホルモン産生腫瘍を原疾患と国内及び海外共にADPKDの腎臓ののう胞増大の原因を直接治療する方法はなく、高血圧や腹痛又は側腹痛(腎臓痛)等の合併症に対する対症療法が中心となっています(2014年2月現在)。日本人患者も参加した第Ⅲ相国際共同試験では、ADPKD患者を対象として3年間の長期投与による有効性及び安全性が確認され、2014年3月に「腎容積が既に増大しており、かつ、腎容積の増大速度が速い常染色体優性多発性のう胞腎の進行抑制」の効能又は効果がサムスカ錠7.5 mg・15 mgに追加されました。また、サムスカ錠30 mgも2014年3月に製造販売承認を取得しました。なお、本適応症は2006年8月11日に希少疾病用医薬品に指定されています。〈抗利尿ホルモン不適合分泌症候群の開発の経緯〉抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(Syndrome of Inappropriate secretion of AntiDiuretic Hormone:以下、SIADH)は、抗利尿ホルモン(バソプレシン)が不適切に過剰に分泌され、低ナトリウム血症を呈する疾患です。SIADHの治療では、原疾患の治療による血清ナトリウム濃度の改善がみられない場合、重度の低ナトリウム血症では高張食塩水の点滴により、軽度の低ナトリウム血症では主に水分摂取制限により血清ナトリウム濃度の補正を行います。水分摂取制限等で血清ナトリウム濃度の補正が不十分な場合は、バソプレシンする場合に限定され、投与期間は最大7日以内となっています。したがって、緊急の血清ナトリウム濃度の補正を必要としない患者で、水分摂取制限等では十分な有効性が得られない場合に、原疾患を問わず血清ナトリウム濃度の改善及び維持を可能とする新たな治療薬が求められていました。国内で実施した第Ⅲ相臨床試験では、水分摂取制限を実施しても低ナトリウム血症が改善しないSIADH患者を対象として30日間の投与による有効性が確認され、2020年6月に、「抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)における低ナトリウム血症の改善」の効能又は効果が追加されました。なお、本適応症は2017年3月24日に希少疾病用医薬品に指定されています。〈顆粒剤及びOD錠の開発の経緯〉サムスカ顆粒1%は、医療現場からの要望により、患者の症状・状態に応じた細かな用量調節が可能であり、また、錠剤の服用が困難な患者でも服用しやすい製剤として開発し、2017年3月に製造販売承認を取得しました。また、サムスカは医療現場において幅広い年齢層の患者及び他の利尿薬で効果不十分な比較的重症な心不全患者を含む様々な疾患を有する患者を対象に使用されており、特に、高齢者等の患者では嚥下機能の低下に伴い、既存(普通錠、顆粒剤)の製剤が服用しにくいこともあるため、普通錠と同じサイズで、口腔内で速やかに崩壊する簡便で服用しやすい製剤としてサムスカOD錠7.5 mg・15 mg・30 mgを開発し、2019年8月に製造販売承認を取得しました。海外では、承認されている効能又は効果は異なりますが、欧米を含め40ヵ国以上で承認されています(2020年6月現在)。なお、サムスカ錠7.5 mg・15 mg・30 mgは販売を中止し、2021年3月31日に経過措置期間が終了したため、薬価基準から削除されました。2
元のページ ../index.html#5