開発の経緯※ カルシニューリン阻害薬は細胞内シグナル伝達に関与する脱リン酸化酵素であるカルシニューリンの活性化を阻害し、IL-2などの産生・放出抑制により 免疫抑制作用を示す薬である。3ルプキネスの有効成分であるボクロスポリンは、ループス腎炎の治療薬としてAurinia Pharmaceuticals Inc.(以降、オーリニア社)が開発した新規のカルシニューリン阻害薬(CNI)※です。ループス腎炎は、慢性自己免疫疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)にみられる症状のひとつで、腎機能障害を引き起こします。SLE患者におけるループス腎炎の有病率は、難病情報センターによると約半数と報告されています1)。SLEでは患者の約9割を女性が占め、主に20~40代に発症する疾患であるため2)、SLEに合併して生じるループス腎炎の患者の多くも女性であることが推察されます。そのため労働生産性だけでなく、妊娠・出産・育児といった家庭活動を含めた社会活動の維持が、SLEの治療目標として掲げられています3)。またループス腎炎患者の10~30%が末期腎疾患(ESRD)を発症すると推定され4-5)、ESRDを発症したループス腎炎患者での死亡リスクが、人口統計学的にマッチングした全般的な集団と比較して26倍高いことと関連していると報告されています4-7)。治療の進歩にもかかわらず、ループス腎炎に起因するESRDの発症率は、ここ数十年ほとんど変化していません6-8)。本邦のSLE診療ガイドライン2019では、ループス腎炎の治療としてミコフェノール酸モフェチル(MMF) もしくはシクロホスファミド間欠静注療法(IVCY)とグルココルチコイド(GC)の併用投与が推奨されて います3)。近年いくつかの研究文献9-10)では、ループス腎炎に対する標準治療にCNIを追加するマルチターゲット療法が検討され、治療への使用が提案されています。ルプキネスはシクロスポリンの分子内のアミノ酸-1残基の側鎖が変換された新しいCNIです。ルプキネスは小規模探索的非盲検試験(AURION試験)、第Ⅱ相及び第Ⅲ相の二重盲検プラセボ対照試験(AURA-LV試験及びAURORA1試験)、第Ⅲ相長期継続試験(AURORA2試験)の4試験により有効性及び安全性が検討されました。これらの結果から、本邦では2023年11月に製造販売承認申請を行い、「ループス腎炎」を効能又は効果として2024年9月に製造販売承認を取得しました。開発の経緯
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